事故・送検報道「製造工場の開口部から墜落 危険防止措置怠り送検」

事故・送検報道

2021年3月

事故や送検された報道について、類似事例を交えて、気を付けたいポイントを解説します。

労働基準監督署は、工場内の開口部に囲いを設けなかったとして、美容雑貨・化粧品など製造販売業と同社代表取締役を労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反などの疑いで、地検に書類送検した。同社の工場に派遣された労働者が開口部から墜落し、死亡する労働災害が発生している。

労災は、令和元年9月27日、同社工場内で発生した。50歳代の女性派遣労働者が、2階で製品の搬出作業に従事していたところ、開口部から3.87メートル下へ前のめりに墜落し、死亡した。
代表取締役は、囲いや手すりなど、労働安全衛生規則で定められた危険防止措置を怠っていた疑い。同労基署によると、「墜落の危険は認識していたが、多忙のため柵を設置しなかった」という。

引用元:労働新聞社 送検記事

開口部からの墜落による死亡労働災害です。

開口部って何?

開口部とは

事故が発生した詳細は報道に記載されていないため、 類似災害を例に解説します。

開口部は、一般的に2階などの上の階に、大きな荷物を上げ下げする、上階の床に設ける穴であることがあります。

2階にぽっかり開いた穴。穴をそのままにしていて、落ちたという・・・

なぜ落ちた?

穴があるので落ちた。人は重力に逆らうことはできません。

とはいえ、穴があるから単純に落ちました、というのは事例として少ないです。

よくある例としては、

〇近くで作業していたが、単純に周りが暗くて見えてなかった

〇物を上げ下げしているときに、荷が振れて、引っ張られた拍子に落ちた

〇 熱い環境や高血圧などで、立ち眩みがあった拍子に落ちた

〇社員は知っていたが、 派遣の人は穴の存在自体を知らなかった

などが重なったときです。

どうすればいいのか?

通常は開口部に対して手すりなどを設けて、 人が落ちないようにしておきます。 別のやり方として、 開口部そのものを塞いでおきます。

法令ではどうなっているか?

労働安全衛生法・労働安全衛生規則等において、事業者は労働者に危険を及ぼすおそれがない よう、作業に応じて各種の措置が事業者に義務付けられています。

その中で

(開口部等の囲い等)

第五百十九条 事業者は、高さが二メートル以上の作業床の端、 開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、囲い、手すり、 覆(おお)い等(以下この条において「囲い等」という。)を設けなければならない。

2 事業者は、前項の規定により、 囲い等を設けることが著しく困難なとき又は作業の必要上臨時に囲い等を取りはずすときは、防網を張り、労働者に要求性能落制止用器具を使用 させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。


引用元:厚生労働省

法令でも同じですね。

特に、安衛則第519条第2項にもあるように、手すりや覆いを外すなら、安全帯(現在は墜落制止用器具と言います)を着用し、近くの頑丈なものにフックを掛ける。ないならフックを掛ける取り付け設備自体を設けておくことが別途必要です。

何故していなかったのか?

類似災害で多い理由としては、

大きな荷・重い荷を置くために開けているので、手すりがあると荷が吊り上げられない 中2階という限られた天井高さでは特に多いパターンです。

では取り外しできる手すりや、 蓋も考えられるのですが、よくあるのが、たまにしか使わない場所、たまにしか出さない荷物なので、費用をかけたくない·手間をかけたくないという 心理から何もしていないことがあります。

たまにだから良いだろう。

特に心理的にリスクが大きいものほど、人はそのリスクをないものとして考えたがる傾向があります。正常性バイアスともいったりします。

穴があっても、そんなことは起きないだろうとです。

ですが、残念ながらこのような事故は毎年のように全国で起きています。 これらの措置をしていないと、 先の送検事例のように、 100回、1000回繰り返すうちに、危険が顕在化し、死亡事故が発生するものです。 なぜなら危険(開口部) が残っているからです。

穴があったら落ちるかもしれないと、

手すりや蓋(覆い)は確実に設けましょう。 手すりや蓋を外した場合は、墜落制止器具を着用してフックを掛けましょう。

「・・・かもしれない」と心掛けることが重要です。

 

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